土地探しの前に知っておきたい「用途地域」とは?基礎知識と調べ方を解説

2024/07/19

竹内建設のスタッフ 小西 宏明
著者
小西 宏明

目次

注文住宅を建てる際には、家族みんなが住みやすい土地を探すことから始めるという方も少なくないでしょう。どんな土地に家を建てるかも、快適に過ごせるかどうかの重要なポイントになります。

ただ、家を建てるには土地があればどこでもいいというわけではありません。エリアごとに目的や制限の定められた「用途地域」という区分けがあるのをご存じでしょうか。

これから土地探しをするという方に向けて、その前に知っておきたい「用途地域」の基礎知識と調べ方を解説いたします。

用途地域とは何のこと?


用途地域とは、行政が定めた都市計画によって、地域を住宅地・商業地・工業地などの用途ごとに13種類に分けているものです。

土地の利用目的が異なると、利便性が悪くなったり生活環境が悪くなったりといった問題が発生しやすくなります。たとえば、工場のすぐ隣に住宅を建てると、騒音や公害などの影響を受けることもありますし、工場にとってもトラックなどが搬入しにくくなるなどの問題が出てきます。

そこで、土地の利用目的に合わせてエリアを分け、同じ種類の建物が近くに建てられるように区分し、それぞれが快適に効率よく活動できるようにしているのです。

用途地域の区分によって建築物の用途の制限や建て方のルールが定められていますので、家を建てる際には住宅に向いているエリアを選びましょう。

また、用途地域が指定されていない区域もあります。用途地域指定のないエリアは制限がゆるく建物をたてやすいとも言えますが、電気やガスといったインフラが整備されていない可能性があるため注意が必要です。

用途地域は大きく分けて3つに分類される

用途地域は全部で13区域ありますが、大きく分けると住居系・商業系・工業系の3つに分類されます。

住居系

住居系は住環境について優先されている用途地域で、13地域あるうちの8地域がここに分類されます。住宅を建てるのに向いている地域で、学校や病院、商業施設などの建築が認められているエリアもあり、買い物や子育てなどにも便利です。

商業系    

商業系には2つの地域が分類されており、主に商業施設等の建設に向いているエリアです。住宅を建てることもできますが、騒音や人通りの多さから住みにくさを感じる場合もあります。

工業系

工業系には3つの地域が分類されており、主に工場の利便性が高くなるように設定されています。タワーマンションなど住居が建てられることもありますが、工場に出入りするトラックなどが頻繁に通るようになり、騒音や排気ガスなどの問題もあります。

用途地域13種類の特徴を一覧にして解説

それでは、用途地域13種類の特徴を細かく見ていきましょう。
まずは簡単にそれぞれの特徴を表にまとめましたので、気になる項目をチェックしてみてください。



分類 名称 特徴
住居系 第一種低層住居専用地域 戸建てや低層階のマンション、小規模なお店や事務所兼住宅、小中学校などが建てられます。閑静な住宅街でゆったり暮らしたい人に向いています。
第二種低層住居専用地域 戸建てや低層階のマンション、小中学校などのほかに150㎡までのお店も建てられます。静かな住宅街の中に便利さも兼ね備えています。
第一種中高層住居専用地域 戸建てやマンションなどの中高層住宅のほかに病院、大学、500㎡までのお店などが建てられます。
第二種中高層住居専用地域 戸建てやマンションに加え、病院、大学などのほか1,500㎡までのお店や事務所などの施設が建てられます。
第一種住居地域 住居の環境を守るための地域です。3,000㎡までの店舗、事務所、ホテルなどが建てられ、利便性の高い住宅街になっています。
第二種住居地域 主に住居の環境を守るための地域です。店舗、事務所、ホテル、カラオケボックスなどが建てられ、にぎやかなエリアとなっています。
準住居地域 道路の沿道に自動車関連施設や住居が建設できるエリアで、国道や幹線道路沿いのため車移動がメインの方向けです。
田園住居地域 農地と低層住宅が調和しているエリア。農業を始めたい方や農業関連の店舗で働きたい方に向いています。
商業系 近隣商業地域 住宅や店舗、小規模の工場などが建てられるエリアで、近隣住民が日用品の買物などをするのに便利です。
商業地域 銀行や映画館、飲食店、百貨店などが集まる市街地の中心部やターミナル駅の周辺部などのエリア。利便性が高く、中高層マンションの建設地としても人気です。
工業系 準工業地域 軽工業の工場やサービス施設などが建てられる地域で、工場以外にマンションなどの住居も建てられています。
工業地域 どんな工場でも建設でき、住宅や商業施設も建てられますが、学校、病院、ホテルなどは建設不可となっています。
工業専用地域 工場専用のエリアとなり、住宅や商店、学校、病院、ホテルなどは建てられず、住むことはできません。

【住居系】8つの地域    

住居系には13地域あるうちの8地域が分類されており、どんな住宅が向いているのか細かく分けられています。

住居系①:第一種低層住居専用地域


低層住宅の住環境を守るための地域です。10mもしくは12mの高さ制限が設けられており、マンションも建てられますが、3階建てくらいの低層物件となります。

店舗兼住宅、事務所兼住宅、小中学校なども建てられますが、店舗兼住宅は非住宅部分の床面積が50㎡以下で業種も決められているため、限定的で小さな店舗になります。

大きな商業施設はないので、買い物などに少し不便さを感じるかもしれませんが、その分庭や駐車場などを広めに確保できるでしょう。

・おすすめポイント:閑静な住宅街でゆったりと過ごしたい人にぴったりのエリアです。

住居系②:第二種低層住居専用地域

高さ制限は第1種低層住居専用地と同様で、さらに床面積150㎡以内で2階建以下の店舗、飲食店、コンビニなどが建てられます。

・おすすめポイント:近場でのちょっとした買い物もしやすくなるので、閑静な住宅街ながら利便性を求める方に向いています。

住居系③:第一種中高層住居専用地域


中高層住宅の環境を守るための地域で、建物の高さ制限はなくなります。
2階以下で床面積500㎡以下の店舗や飲食店、スーパーなどのほかに、病院や大学、300㎡までのコインパーキング、高等専門学校等や図書館なども建てられます。

容積率などの制限も緩くなり、マンションなどの集合住宅、2階・3階建の戸建てに店舗も混在した住宅街になります。

・おすすめポイント:買い物にも便利で子育てもしやすい施設が集まるので、ファミリーで暮らす方に向いています。

住居系④:第二種中高層住居専用地域    

中高層住宅に加え、2階以下で1,500㎡までの飲食店や各種店舗、事務所などの施設も建てられるようになり、職場としての活用もできるようになります。

第一種中高層住居専用地域よりも大型の商業施設やオフィスなども増え、さらに利便性が高まります。

・おすすめポイント:職場の近くに住みたい人や、自宅兼事務所を建設したい人に適したエリアです。

住居系⑤:第一種住居地域

第一種・第二種中高層住居専用地域で可能な建物に加え、3,000㎡までの店舗や事務所、ホテルや旅館、ボーリング場、スケート場などスポーツ施設も建てられるようになります。

作業場の床面積が50㎡以下の工場も建設可能ですが、パチンコ屋、カラオケボックスなどの施設は建てられません。多くの人が集まる商業施設が建てられるので、にぎやかな住宅地域になります。

・おすすめポイント:静かな環境よりも利便性を希望する方や若い方の一人暮らし、よく外出する方などに向いています。

住居系⑥:第二種住居地域

主として、住居の環境を保護するための地域で、大規模な店舗、事務所などが建てられるようになります。
さらに、床面積10,000㎡以下ならパチンコ店やカラオケボックスなども建築可能となり、一層にぎやかでいろいろな人が集まりやすいエリアになります。

・おすすめポイント:家の近くによく遊びに行く施設が欲しい方や、にぎやかな雰囲気が好きな方などに向いています。

住居系⑦:準住居地域

道路の沿道としての地域において、自動車関連施設などの立地と調和した住居環境を保護する目的があります。

自動車車庫や自動車修理工場など車に関する施設や、小さめの劇場・映画館なども建てられるエリアで、住居系用途地域の中では最も許容範囲が広い地域となります。

・おすすめポイント:車での移動がしやすい国道や幹線道路が近くにあるため、普段から車移動をよくする方や遠出をする方に便利なエリアです。

住居系⑧:田園住居地域


2018年4月1日に新たに追加された用途地域で、農業の利便性と低層住宅の環境を保護するための地域です。

建物の制限は第1種低層住居専用地域に近く、床面積500㎡以下の農産物直売所や農家レストランなど、農業の利便増進に必要な店舗・飲食店も認められています。

・おすすめポイント:これから農業にチャレンジしてみたい方や、農業レストランなどで働きたい方、新鮮な野菜を身近で入手したい方などに向いているエリアです。

【商業系】2つの地域

商業系は2つの地域に分類されており、主に買い物や遊びに使える商業施設などを建設できますが、住宅を建てることも可能です。

商業系①:近隣商業地域


近くの住宅地に住む住人が日用品などの買い物に利用できる商業地域です。

床面積合計10,000㎡までの店舗、飲食店、展示場、遊技場などの施設が建設可能で、大型のスーパーマーケットや商店街などが形成されやすくなります。

いろいろな施設に出かけるのには便利になりますが、人や車の往来が増え騒がしくなります。

・おすすめポイント:特に利便性を重視する人や、近くの商業施設で働く人などが住むのに向いています。

商業系②:商業地域


店舗や事務所、商業などの利便を増進するための地域で、市街地の中心部や主要駅周辺などに指定されています。

オフィスビルや銀行、映画館、飲食店、百貨店などあらゆる施設が集まり騒々しいエリアとなります。

・おすすめポイント:住宅は建てられますが戸建てが建てられることは少なく、中高層マンションが増えます。駅の近くのマンションに住んで通勤しやすさを求める方には最適でしょう。

【工業系】3つの地域

工業系は3つの地域に分類されています。主に工場の利便性を高める地域ですが、一部では住宅を建てることも可能です。

工業系①:準工業地域

環境の悪化をもたらす恐れのない工業の利便を増進する地域で、軽工業の工場やサービス施設等が建設されます。

工場の規模についての規制はありませんが、住宅なども混在することがあるため、振動や騒音の発生、火災の危険性がある業種は禁止されています。

・おすすめポイント:マンションも多く建てられており、工場で働く人の利便性が高いエリアです。

工業系②:工業地域

主に工業の業務の利便の増進を図る地域で、どんな工場でも建設可能です。

住宅や店舗も建てることはできますが、学校・病院・ホテルなどは不可となっています。工場跡地の再開発としてマンションや戸建て住宅の分譲地になることもあります。

・おすすめポイント:湾岸地域が指定されていることも多いため、そういった立地に住みたい人に人気のエリアです。

工業系③:工業専用地域


工業の業務の利便の増進を図る地域であり、工業専用のエリアとなります。

どんな工場でも建てられますが、工業地としての活用を妨げるような住宅や店舗、学校、病院、ホテルなどは建てることはできません。

・おすすめポイント:工業専用のエリアのため、この地域には住めないので注意してください。

用途地域の調べ方

どんな用途地域があるか把握できたら、自分が建てたいエリアがどこに分類されているかを調べましょう。用途地域の調べ方には3つの方法があります。

方法①:用途地域マップ、国土数値情報ダウンロード

用途地域を調べる専門のサイトに、用途地域マップと国土数値情報ダウンロードがあります。

用途地域マップは、全国市区町村の用途地域を閲覧できるサイトで、都道府県と市区町村を順番に選択すると住居地域・商業地域・工業地域が表示されます。

国土数値情報ダウンロードは、全国の用途地域について建ぺい率、容積率、総括図作成団体名などが表示されるサイトです。
情報を得たい県名をクリックしてデータをダウンロードすることで閲覧できます。

・用途地域マップ
 用途地域マップ
・国土数値情報ダウンロード
 国土数値情報 | 用途地域データ

方法②:自治体のサイトや窓口

それぞれの自治体のサイトや窓口でも、用途地域を調べることができます。
各自治体のホームページで用途地域の検索ができる場合もありますので、遠方の地域で窓口まで赴けない方はぜひ利用してみてください。

まずは、住みたい地域の名前と用途地域で検索してみるといいでしょう。

方法③:不動産会社やハウスメーカー    

ある程度住みたい土地の目途がついていて購入を検討している場合などには、仲介会社となる不動産会社や、建築を依頼するハウスメーカーに聞くのも確実です。

土地探しから依頼できる不動産会社やハウスメーカーなら、そのエリアの土地についても詳しく、希望の住宅を建てるのにおすすめの土地を案内してくれるでしょう。

用途地域がまたがる場所に家を建てる場合

家を建てるために選んだ土地が、異なる用途地域にまたがっている可能性もあります。その場合、用途地域の制限は種類ごとに異なるので注意してください。

①建物の用途制限

複数の用途地域にまたがっている土地は、敷地面積の大きいほうの用途地域の制限が全体に適用されます。

②建ぺい率、容積率

建ぺい率や容積率は、敷地それぞれについて加重平均を算出した数値が適用されます。特に、 容積率については、前面道路幅員によっても制限の計算が異なるので注意が必要です。

③高さ制限    

建物の高さ制限は、用途地域の境目で分けられます。高さを出す部分の用途地域の制限に従い、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限なども計算されます。

日影規制は、建物の陰になる部分の中でもっとも厳しい日影規制を受けることになります。

④防火規制(防火地域・準防火地域)    

防火地域や準防火地域にまたがってしまう場合は、面積の大きさにかかわらず、もっとも厳しい規制が全体に適用されることになります。

ご相談なら竹内建設へ    


竹内建設では、ライフスタイルや住まいへのこだわり、予算などからお客様の希望に沿うような家づくりのご提案をしています。

また、家を建てる前の土地探しも行っており、おすすめの土地情報を紹介しています。用途地域についてもしっかり調べてご案内していますので、希望の住環境や条件に合った土地をお探しいたします。

これから家を建てるための土地をお探しでしたら、ぜひ一度竹内建設にご相談ください。

▶お問い合わせはこちらから

まとめ    家を建てた後の暮らしのためにも用途地域について把握しておこう

用途地域は、どんな建物が建てられるか制限があるだけでなく、家を建てた後の住環境にも大きくかかわってくる制度です。

駅から近くて便利だと思ったエリアに家を建てても、後から望まない商業施設や工場が建ってしまうと、周辺の環境が一変してしまう可能性もあります。

用途地域は種類も多く高さや面積の制限など、イメージしにくいこともあるでしょう。まずは家を建てたい地域に詳しい不動産会社やハウスメーカーに相談してみてください。

住みたい家の環境に希望条件があるのなら、それに適した用途地域から土地を探すのもいいですね。ぜひ、今回の記事を参考に、どんな住環境で暮らしていきたいか検討してみてください。

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