土地探しの前に知っておきたい「建ぺい率」と「容積率」とは?基礎知識について解説

2024/07/19

竹内建設のスタッフ 花田 徹
著者
花田 徹

目次


注文住宅を建てる際、土地探しは避けては通れません。

しかし、いざ土地を探し始めると「建ぺい率」や「容積率」などの聞きなれない用語が出てきて、不安になる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、土地を選ぶ際に知っておきたい建ぺい率と容積率の基本や計算方法について、分かりやすく解説します。

建ぺい率とは


建ぺい率とは、土地の上にどれだけの建物を建てられるかを示す指標です。

土地の水平投影面積、つまり建物を真上から見たときの面積が、その敷地全体の面積に対してどれほどの割合を占めるかをパーセンテージで表したものになります。
たとえば、建ぺい率が60%であれば、敷地面積の60%までの建物を建てられます。

この比率が高いほど、土地に対して建物の敷地面積が大きくなります。
建ぺい率は、都市計画や建築基準法によって定められており、地域や用途によって異なる制限が設けられています。土地の有効活用や市街地の整備にも影響を与えるため、不動産を購入する際や建築計画を立てる際には、この数値を正確に理解し守る必要があります。

建ぺい率の目的

建ぺい率に一定の基準が設けられているのには、以下のような理由があります。

・過度な開発を防ぎ、住環境の保護を図る
・都市の景観を整え、美観を保つ
・災害時の安全性を高める

もし建ぺい率を設けていないと、敷地面積いっぱいに建物を建てても良いことになり、万が一火災が起こった際に延焼被害が拡大してしまう恐れがあります。また、日照権や風通し、プライバシーの保護が難しくなり、住みやすさが損なわれるため、建物同士に一定の距離を置く必要があります。また、火災が発生した際、建物間に十分な空間があることで炎や煙の拡散を抑え、避難経路を確保できます。

これらの理由から、建ぺい率には一定の基準が設けられ、土地利用の計画性を高めるとともに、住民の生活品質を守るための重要な役割を果たしているのです。

建ぺい率の計算方法

建ぺい率の計算方法は、土地の面積に対する建築面積の割合を表します。計算式は以下の通りです。

建ぺい率(%) = 建築面積(㎡)÷ 敷地面積(㎡) × 100

たとえば、敷地面積が100㎡で建ぺい率が60%の場合、建築面積は最大で60㎡までとなります。

建築面積とは、建物を真上から見たときの面積を指し、バルコニーや庇(ひさし)、屋外に設置された階段部分が1m以下の場合は建築面積には含まれません。

この計算を行うことで、計画している建築物がその土地に適合しているかどうかを判断できます。また、地域によって建ぺい率は異なるため、土地を購入する前にはその地域の建築基準を事前に確認しましょう。

容積率とは


容積率とは、土地の有効活用度を示す都市計画上の重要な指標の一つです。具体的には、土地の面積に対して建築可能な建物の総床面積(延べ床面積)の割合を指し、その数値によって建物の大きさや高さが制限されます。

容積率は地域によって異なり、商業地域や住宅地域など用途に応じて定められ、計画的な都市開発に不可欠な役割を果たしています。注文住宅を建てる際には、建ぺい率と合わせてその土地の容積率を確認し、適切な建築計画を立てましょう。

容積率の目的

容積率とは、土地の面積に対して建築可能な建物の延べ床面積の上限を定める都市計画上の重要な指標です。この制限は、単に地上のスペースだけでなく、3次元的な視点から都市の密度を調整するために設けられています。

・土地あたりの人口密度を一定に保つ
・インフラ機能を適切に維持する

容積率は、土地利用のバランスを保ちながら過密化を防ぎ、住民一人ひとりが快適に暮らすために定められています。

たとえば、容積率が設けられていないと、敷地内に10階建ての建物を建設することも可能となり、景観が崩れたり人口が過密化したりといった不具合が生じてしまいます。

容積率を通じて人口密度を調整することで、交通や公共施設などのインフラが適切に機能し、持続可能な都市開発を促進できるのです。このように容積率は、都市の健全な成長と住環境の質を守るために不可欠な規制の一つと言えるでしょう。

容積率の計算方法

容積率を算出するには、家の全階の床面積の合計(延べ床面積)と、その家が建つ土地の面積(敷地面積)を用います。具体的な計算式は以下の通りです。

容積率(%)= 延べ床面積(㎡)÷ 敷地面積(㎡)× 100

たとえば、延べ床面積が200㎡で敷地面積が400㎡の場合、容積率は200÷400×100で50%となります。この数値は土地の有効活用度を示す指標として、建築計画を立てる際に重要です。

建ぺい率・容積率の上限は地域によって異なる

建ぺい率と容積率は土地の用途地域によって上限が異なり、地域の特性や都市計画に基づいて定められています。

用途地域は、土地利用の計画性を確保し、住環境の保護や良好な都市構造の形成を目的として設けられています。それぞれの用途地域には、建築できる建物の種類や高さ、建ぺい率・容積率などが定められており、地域の特性に応じた規制が行われています。

・第一種低層住居専用地域:主に低層の戸建て住宅が建てられる地域で、静かで落ち着いた住環境が保たれる
・第二種低層住居専用地域:第一種に比べるとやや高い建物の建設が可能で、小規模な店舗なども設けられる
・第一種中高層住居専用地域:中高層のマンションやアパートが建ち並ぶ地域で、住宅の集約化が進む
・第二種中高層住居専用地域:第一種よりもさらに高い建物の建設が許可されており、住宅と共に商業施設や事務所なども見られる
・第一種住居地域:主に住居の環境を守るための地域で、比較的低い建物の建設が中心
・第二種住居地域:第一種よりも多様な建物が建設されることが許されており、住宅だけでなく、店舗や事務所なども建てられる
・準住居地域:住宅と商業施設が混在する地域で、住居と商業のバランスを取りながら、都市機能の充実を図る
・田園住居地域:自然環境を生かした住宅地の形成を目指す地域で、開発が制限されており、緑豊かな環境が保たれる
・近隣商業地域:まわりの住民が日用品の買物などをするための地域で、住宅や店舗のほかに小規模の工場も建てられる
・商業地域:銀行・映画館・飲食店・百貨店などが集まる地域で、住宅や小規模の工場も建てられる
・準工業地域:主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域で、危険性・環境悪化が大きい工場のほかは、ほとんど建てられる
・工業地域:どんな工場でも建てられる地域で、住宅やお店は建てられるが、学校・病院・ホテルなどは建てられない
・工業専用地域:工場のための地域で、どんな工場でも建てられるが、住宅・お店・学校・病院・ホテルなどは建てられない

これらの用途地域は、それぞれの地域の特性を活かしつつ、住民の生活の質を高めるための計画的な土地利用を目指して設定されています。



用途地域 建ぺい率の上限 容積率の上限
第一種低層住居専用地域 30・40・50・60 50・60・80・100・150・200
第二種低層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域 100・150・200・300・400・500
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域 50・60・80 100・150・200・300・400・500
第二種住居地域
準住居地域
田園住居地域 30・40・50・60 50・60・80・100・150・200
近隣商業地域 60・80 100・150・200・300・400・500
商業地域 80 200・300・400・500・600・700・800・900・1,000・1,100・1,200・1,300
準工業地域 50・60・80 100・150・200・300・400・500
工業地域 50・60 100・150・200・300・400
工業専用地域 30・40・50・60
用途地域指定のない区域 30・40・50・60・70(※) 50・80・100・200・300・400(※)

※特定行政庁が都市計画審議会の議を経て定める
参考:国土交通省|みらいに向けた まちづくりのために

建ぺい率や容積率の制限によって建てられる家の大きさが変わってくるため、必ず確認しましょう。

条件によって建ぺい率・容積率の上限が緩和される

建ぺい率と容積率には、特定の条件下において、その上限が緩和される特例が定められています。それぞれの条件について、詳しく見ていきましょう。

建ぺい率が緩和される条件

特定の条件下では、建ぺい率の制限が緩和されることがあります。ここでは、建ぺい率の制限が緩和されるケースについて解説します。

建ぺい率の制限を受けないケース

建築基準法第53条6項には、建ぺい率の制限を受けない特例が規定されています。

一 防火地域(第一項第二号から第四号までの規定により建蔽率の限度が十分の八とされている地域に限る。)内にある耐火建築物等
二 巡査派出所、公衆便所、公共用歩廊その他これらに類するもの
三 公園、広場、道路、川その他これらに類するものの内にある建築物で特定行政庁が安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて許可したもの
引用:建築基準法第53条6項

上記のうち、住宅に関連するものは一番目の項目で、定められた建ぺい率が80%の用途地域(第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、準工業地域、近隣商業地域、商業地域)で、かつ防火地域内にある耐火建築物は、建ぺい率が無制限(100%)になります。

このケースでは建ぺい率の制限が免除されるため、土地を有効活用できます。

建ぺい率の割り増しが受けられるケース

建築基準法第53条3項では、建ぺい率の割り増しに関する規定が設けられており、一定の条件を満たすことで、建ぺい率を通常よりも高く設定できます。

割り増しが認められるのは、主に以下の2つのケースです。

・土地で特定行政庁が指定した、道路に2面以上接している角地(2つの道路が交差する地点に位置する土地)にある建築物
・用途地域の建ぺい率が80%以下で、かつ「防火地域内にある耐火建築物または、これと同等以上の延焼防止性能を有するものとして政令で定める建築物」または「準防火地域内にある耐火建築物、準耐火建築物または、これと同等以上の延焼防止性能を有するものとして政令で定める建築物(耐火建築物等を除く)」

耐火建築物は、通常の火災による周囲への延焼を防止するために主要構造部(壁・柱・床・梁・屋根・階段))が耐火性能を満たし、かつ防火戸などの政令で定める防火設備を有している建築物です。

準耐火建築物は、火災による周囲への延焼をふ防止するために主要構造部(壁・柱・床・梁・屋根・階段)が準耐火性王を満たし、かつ延焼の恐れのある開口部に防火戸など政令で定める防火設備を有している建物です。

上記のどちらかに該当すると10%、両方に該当すると20%の割り増しを受けられます。ただし、地域の条例や都市計画による制限も考慮する必要がありますので、事前の確認が必要です。

参考:建築基準法第53条3項

容積率が緩和される条件

容積率が緩和される条件については、以下の5つが挙げられます。

①ロフトや小屋裏(屋根裏)収納がある

ロフトや小屋裏収納がある場合、直下にあたる部屋の床面積の1/2以下を限度として、容積率の計算から除外できます。
ただし、小屋裏の高さは1,400mm以下とされています。

このような空間は、居住の主要な部分としては考えられておらず、収納としての機能に特化しているため、容積率の緩和対象となるのです。

②地下室がある

地下室のうち、住宅として使用する部分の床面積の1/3を限度として、容積率の計算から除外されます。

地下室を上手く活用することで、土地の有効活用が図れると同時に、建築計画の幅も広がるでしょう。

③車庫やガレージがある

ビルトインガレージ(建物の1階部分にあるガレージ)の場合、ガレージの面積が延べ床面積の1/5を限度として、容積率の計算から除外されます。

④特定道路から分岐した道路に接する土地である

特定道路とは幅員15m以上である大きな道路のことです。この特定道路から分岐した道路に接する土地で、以下の2つの条件を満たす場合は、特定道路までの距離に応じて容積率を加算できます。

・分岐した道路の幅員が6m以上、12m未満である
・特定道路から70m以内に位置している

この緩和は、道路幅員によって制限される容積率を柔軟に調整するための規定です。

⑤その他

容積率の計算においては、建築基準法による「容積率の不算入措置」が存在します。

たとえば、マンションや集合住宅における共用スペース・ホール・廊下・階段などは、居住空間としての機能を持たないため、容積率の算定対象外となります。これにより、居住者の利便性や建物の機能性を高めるための空間を確保しつつ、建築物の容積率を抑えられます。

このような措置は、建物の設計における柔軟性を高め、より快適な居住環境の実現に寄与します。

参考:建築基準法第52条第6項

建ぺい率・容積率が異なる地域にまたいで建てる場合

建ぺい率や容積率は地域によってその上限が異なることがあり、それぞれの制限が異なる地域にまたいで建築を行う際は、計画段階での注意が必要です。ここでは、それぞれのケースにおける具体例を挙げて解説します。

まず、建ぺい率が異なる地域にまたがって建築するケースを考えましょう。敷地が複数の建ぺい率を持つ区域にまたがるケースでは、建築可能な面積を算出するために「加重平均」の原則が適用されます。

たとえば、面積が100㎡の敷地の60%が建ぺい率60%のA区域、残りの40%が建ぺい率40%のB区域に位置している場合、加重平均を求めると次のようになります。

(A区域の建ぺい率 × A区域の敷地面積) + (B区域の建ぺい率 × B区域の敷地面積)
= {60% × (60/100㎡)} + {40% ×( 40/100㎡)} = 52%


この結果、加重平均の建ぺい率は52%となり、この率を超えない範囲で建物の建築が可能です。

次に、容積率が異なる地域にまたがって建築するケースを考えます。敷地が複数の容積率を持つ区域にまたがるケースでは、建ぺい率と同じように「加重平均」を求めて算出します。

たとえば、面積が100㎡の敷地の75%が容積率80%のC区域、残りの25%が容積率200%のD区域に位置している場合、加重平均を求めると次のようになります。

(C区域の容積率 × C区域の敷地面積) + (D区域の容積率 × D区域の敷地面積)
= {75% × (80/100㎡)} + {25% × (200/100㎡)} = 110%

この結果、加重平均の容積率は110%となり、この率を超えない範囲であれば建物を建築できます。

以上のように、建ぺい率や容積率が異なる地域にまたがって建築する際には、それぞれの地域の規制に合わせた計画を慎重に立てる必要があります。建築設計の初期段階で、地域の規制を十分に理解し、適切な設計を行うことが、トラブルを避けるためにも極めて重要です。

建ぺい率・容積率によって、建つ家はどのように変わる?

建ぺい率と容積率は、私たちが住む家の形や大きさに影響を与える重要な規制です。では、具体的にどのような変化があるのでしょうか。

まず、建ぺい率は用途地域によって30%から80%の範囲で定められています。たとえば、建ぺい率が50%の場合、100㎡の土地には最大50㎡の建物を建てられます。防火地域や角地などでは、建ぺい率に緩和措置が適用される場合があり、少し大きめの家を建てられる可能性もあります。

次に、容積率は住宅を建てられる土地の場合は50%から200%までの範囲が設定されており、道路幅によっても制限が異なります。低層住宅地では、建ぺい率50%、容積率100%が一般的で、これにより2階建ての家が建てられます。しかし、高級住宅地で建ぺい率30%、容積率60%の場合、同じ2階建ての家を建てるにはより広い敷地が必要となります。

また、3階建て以上の家を建てたいなら、容積率150%以上が必要です。これは、建物の高さが増すほど、より多くの床面積を確保する必要があるためです。マンションや商業地域では、容積率が高いほど高層建築が可能になり、土地の有効活用が図られます。

このように、建ぺい率と容積率は、家の大きさや形、そして建てられる階数に直接的な影響を与えます。土地を購入する際や家を建てる際には、これらの規制をしっかりと理解し、計画を立てることが大切です。また、地域によって異なる規制があるため、建築前には必ず確認を行いましょう。

建ぺい率・容積率以外にもある「建築制限」

新築時の建築制限として、建ぺい率・容積率に加え「日影規制」「斜線制限」「絶対高さ制限」があります。これらの建築制限は、住民の生活環境を守り、良好な住環境を維持するために重要な役割を果たしています。新築を検討する際には、これらの制限に留意し、計画を進めることが不可欠です。

斜線制限

斜線制限は、建築物が隣地や道路に対して与える風通しや採光の影響を最小限に抑えるための規制です。具体的には「建物の高さに応じて、建物の壁面から一定の角度で引いた仮想の斜線を超えて建築できない」というものです。

この斜線は、隣接する敷地の境界線や道路中心線から一定の角度で引かれ「北側斜線制限」や「道路斜線制限」などがあります。用途地域によって角度や高さの基準が異なるため、計画を立てる際には地域の条例を確認しましょう。

日影規制

日影規制は、建築物によって周囲の環境に与える日影の影響を制限するための規制です。特に冬至の日における日照時間を基準に、建物の高さに制限を設けることで、周辺住宅の日照権を保護します。

日影規制により、建物が高くなればなるほどその建物の影が長くなり、周囲に影響を及ぼす範囲が広がるため、高さを制限し、周辺環境の快適性を保つ目的があります。日影規制の詳細は自治体によって異なるため、建築計画前には必ず確認が求められます。

絶対高さの制限

絶対高さの制限は、特定の地域において建築物の高さを一定以下に抑える規制です。これは、景観保護や住環境の保全を目的としており、たとえば低層住居専用地域では地域の特性に合わせて建物の高さが制限されます。

絶対高さの制限は容積率とは独立しており、たとえ容積率内であっても、絶対高さの制限を超える建築は許可されません。このため、計画段階での正確な理解と、自治体の条例に基づいた適切な設計が求められます。

まとめ

建ぺい率と容積率は、家を建てる際や土地を選ぶときに重要となる指標です。理想の住まいを実現するために、その土地の建ぺい率や容積率を確認する必要があります。また、都市計画におけるその他の規制も見逃さないようにしましょう。

設計の工夫次第では、空間を最大限に活用し、家を広く見せることも可能ですので、建ぺい率や容積率の制限にお困りの際は、ぜひ竹内建設にご相談ください。

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