【事例あり】パッシブ換気の仕組みやメリット・デメリット・注意点を解説

2024/11/20

竹内建設のスタッフ 木下 真佐江
著者
木下 真佐江

目次


マイホームを新築する上で、「パッシブ換気」に興味を持つ人は少なくないでしょう。自然の力だけで家中を換気するパッシブ換気は体にも環境にも優しいうえに、暖房効率アップも実現できるため、寒冷地の家に多く導入されています。

一方、パッシブ換気を導入するには構造上の必要条件をクリアしなくてはなりません。そこで今回は、パッシブ換気の仕組みや実現するための条件、メリット・デメリットや注意点などについて詳しく解説します。

実際の施工事例も紹介しますので、マイホームにパッシブ換気を導入するかどうかお悩みの方は、ぜひ参考にご覧ください。

パッシブ換気とは機械に頼らない換気システム

パッシブ換気とは、自然な空気の流れを活用した北海道発祥の換気システムです。一般的に知られているのは換気扇などの機械を使った換気ですが、パッシブ換気は機械の動力を必要としません。

ここでは、動力を使わないパッシブ換気の仕組みや住まいにおける換気の重要性について紹介します。

パッシブ換気の仕組み

パッシブ換気は、動力を使用せず自然の力だけで換気する“計画自然換気”です。機械を使用しなくても、室内の暖かく軽い空気の浮力を活用して、家全体を換気できます。

まず、パッシブ換気の仕組みについて具体的に解説しましょう。

暖かい空気は、上昇する性質を持っています。たとえば、気球が空に浮くのも、この性質を利用しています。

パッシブ換気は、床下で外から取り入れた空気を温め、温めた空気を上昇させることで家中の空気を循環させる仕組みです。循環して冷えた空気は再び床下へ向かい、室内の汚れた空気は煙突から排出されます。

窓を開ける、隙間風を利用するなどの“自然換気”とは異なり、パッシブ換気は建物の構造を工夫して家中の空気がまんべんなく入れ替わるよう計画的に換気を行う“計画自然換気”です。このため、家のどの部分も常に新鮮で快適な温度の空気が流れている状態を保てます。

換気の重要性

住まいにおいて換気は、家族の健康を守るため、そして快適な暮らしを送るために重要な役割を担っています。

ハウスダストやウイルスにより汚れた空気は、きれいな空気よりも重く、床から30cmほどの高さにたまりやすいのが特徴です。これでは、小さな子どもやペットが汚れた空気を吸い込みやすくなってしまいます。

さらに、家全体を均等に換気できないと家の中で寒い所と暑い所が発生し、温度ムラが起こります。家の中に温度ムラがあると結露の発生や冬場のヒートショックのリスクにつながるため、快適性と健康面それぞれに影響を及ぼすのです。

パッシブ換気を実現するためには?


床下と室内の空気をつなぐために設置した「床下ガラリ」

パッシブ換気を導入するためには、住まいの構造上、次のような条件が必要となります。

●    「床下給気口」と「排気用煙突」の設置
●    床下で空気を取り入れて温めるための「基礎断熱工法」
●    チャンバー空間(※)を確保するための立ち上がりが少ない「基礎形状」
●    床下に取り入れた空気を予熱する「集熱パネル」の設置
●    全館暖房のための「床下用エアコン」の設置
●    空気を上昇・下降させるための「通気壁」「床ガラリ」の設置
●    無駄な換気を防ぐための「排気グリル」の設置
●    暖房負荷の増大を抑える「温度感知型給気量制御グリル」の設置
●    空気の移動をコントロールするための高い気密性・断熱性の確保

以上のとおり、パッシブ換気を実現するには家の基礎を作る段階から独自の仕様にする必要があるため、新築もしくは建て替えでの対応となります。
※チャンバー空間:空気をためたり調整したりするための空間

パッシブ換気を導入するメリット7選

住まいにパッシブ換気を取り入れるメリットは、次のとおりです。

●    家中の温度差がなくなる
●    ランニングコストの抑制
●    メンテナンス負担の軽減
●    常に新鮮な空気を維持できる
●    乾燥しにくくなる
●    暖房の設置スペースが不要
●    稼働音が静か

それぞれのポイントについて解説します。

家の中の温度差がなくなる

パッシブ換気では温かな空気を家中に循環させられるため、家中の温度差を軽減できます。温度差の減少によって、快適性がアップするのはもちろん、ヒートショックによる健康障害の予防も可能です。

北海道にパッシブ換気の住まいが多いのも、厳しい寒さという気候条件とパッシブ換気の相性が良い点にあります。床下で予熱をすることで冷気を感じにくくなり、家中どこにいても温かく感じられるパッシブ換気の住まいは、快適性に優れています。

ランニングコストを抑えられる

パッシブ換気は自然の力を利用した換気システムなので、ランニングコストが大幅に抑えられます。

2003年、建築基準法の改正によりすべての建物に24時間換気システムが導入されるようになりました。24時間換気システムは機械を利用して一定量の空気を取り込み汚れた空気を排出しますが、機械で動力を作る必要があるため電気代がかかります。

その点、パッシブ換気は風や太陽熱などの自然エネルギーが動力となるので、ランニングコストがほぼかかりません。とはいえパッシブ換気を導入する場合でも、24時間換気システムの併用が必要になる場面があります。くわしくは本記事の「パッシブ換気の注意点」をご覧ください。

メンテナンスに手間がかからない

機械を使わないパッシブ換気は故障のリスクも少ないため、メンテナンスの手間がかかりません。換気設備の掃除もほぼ不要です。また、パッシブ換気は家全体のメンテナンスコストを抑えられる点でも大きなメリットがあります。

パッシブ換気は室内の温度や湿度を一定に保てるため、カビや結露が発生しにくくなります。自然吸気と予熱処理を繰り返す床下は常に乾燥状態にあり、土台が腐朽しにくいのも特長のひとつといえるでしょう。

結果として建物自体の耐久性が向上し、メンテナンスコストを抑えながら建物を良い状態に維持できます。

留守や停電時も新鮮な空気を保てる

自然エネルギーを利用するパッシブ換気は、常に稼働し続けています。家を留守にしているときも停電しているときも、常に換気をして新鮮な空気を循環させることが可能です。

新鮮な空気を常に保つことで、結露やカビ、ダニも発生しにくい環境を保てます。

乾燥しすぎない

パッシブ換気は室内の湿度に合わせて必要な分だけを換気するため、過度な乾燥を避けられます。寒冷地や冬場などの乾燥しやすい環境でも乾燥しすぎないよう調整できて、快適に暮らせます。

乾燥による肌トラブルや喉の不快感に悩まされる心配がないのは、大きなメリットといえるでしょう。さらに、過度に換気しないため、暖房効率が下がりにくい傾向にあります。

居室に暖房の設置スペースがいらない

パッシブ換気を導入する際は、基本的に暖房機器を床下だけに設置するため、居室に置く必要はありません。室内スペースを広く使えて、家具も自由に配置しやすくなります。

また、居室に暖房機器を設置しないことで掃除しやすくなるメリットがあるほか、暖房機器によるやけどや転倒などのリスクを減らせるので、小さなお子さんや高齢の家族がいる家庭でも安心です。

換気時の音が静か

パッシブ換気は自然の力を最大限に利用して稼働するため、機械換気に比べて吸気音などが静かです。ほぼ無音といえるほど、ストレスなく過ごせるでしょう。

また、住まいの換気システムとして全館空調も挙げられますが、こちらはファンモーターを使って空気を循環するシステムなので、稼働時に音が発生します。室内だけでなく、室外機の音が気になる場合もあるでしょう。

騒音性の低い換気システムを希望するなら、パッシブ換気がおすすめです。

パッシブ換気を導入するデメリットと対策

パッシブ換気の導入はメリットばかりではなく、以下のようなデメリットもあります。

●    夏は換気の流れが弱くなる
●    完全な個室をつくるのが難しい
●    高断熱・高気密仕様で建てる必要がある
●    施工できる業者が限られている

ここでは、デメリットの内容やデメリット解消のための対策について解説します。

夏は換気の流れが弱まる

パッシブ換気は家の中と外気の温度の差が原動力となるため、温度差が少ない夏は、換気の流れが弱まります。

夏も換気の流れをよくするには、パッシブ換気と24時間換気システムを併用する必要があります。また、夏の間は床下の給気口を閉めて別の給気口から空気を取り入れるほうが湿気が入りにくくなるでしょう。

完全な個室はつくりにくい

パッシブ換気は建物の構造を利用して自然に空気を循環させる仕組みなので、完全な個室はつくりにくくなります。たとえば、防音室などの1室だけで換気を完結させるタイプの部屋がある場合や、個室の数が多い家ではパッシブ換気は不向きです。部屋ごとに仕切ると空気の循環を邪魔することになり、換気効率が落ちるからです。

家全体の空気がつながるワンルームのような間取りでは、パッシブ換気のメリットが生かせるでしょう。

高断熱・高気密の家を建てる必要がある

パッシブ換気を導入するには高断熱・高気密の家を建てなくてはならず、建築コストが高くなります。高性能な断熱材を使用したり、気密性の高い窓を取り付けたりするため、材料費が高くつくからです。

これから住まいを新築するうえでパッシブ換気を取り入れたい場合には、高断熱・高気密仕様で見積もっておくことをおすすめします。ただ、断熱性や気密性を高めてパッシブ換気を導入すると初期費用はかかりますが、長期的なランニングコストは軽減できます。計画を立てる際は、トータルの費用で考えて検討しましょう。

施工できる業者が少ない

現実問題として、パッシブ換気を取り扱う施工業者が少ないのは事実です。パッシブ換気の施工には高い専門性が必要であるほか、地域によって需要が偏っている点や施工業者が利益を生みづらい点も理由に挙げられます。

寒冷地である北海道や東北地方においてはパッシブ換気に対応した業者が多いものの、西日本では施工業者が少なめです。パッシブ換気を導入するなら、施工実績が多く専門的知識を持ち合わせた施工業者を見極める必要があるでしょう。

パッシブ換気の注意点

パッシブ換気は機械に頼らず家中を換気してくれるのが大きな特徴ですが、換気効率を上げるためには24時間換気やエアコンの併用がおすすめです。パッシブ換気を導入する際の注意点について解説します。

基本は24時間換気と併用する

夏を中心とした温度差のない時期は風の力だけが頼りとなるため、換気の流れが弱まります。冬などの寒い季節であればパッシブ換気のみで家中を換気できますが、夏は機械換気との併用がおすすめです。

もっとも、建築基準法ですべての建物に24時間換気システムを設置することが義務付けられているため、建築コストが増えるわけではない点は把握しておきましょう。

広さによっては複数台のエアコンが必要

パッシブ換気は坪数に限度があり、エアコン1台であれば45坪程度が目安となります。これ以上広い家では、複数台のエアコンが必要になるでしょう。

また、地域によっては、夏の暑い時期には室内エアコンの設置をおすすめします。

パッシブ換気を導入した家をご紹介


ここで、パッシブ換気を実際に導入した事例を紹介しましょう。パッシブ換気を導入するために施工した部分を解説します。


ご紹介するのは、木のぬくもりが感じられる平屋の住まいです。

実際に施工した換気部分


まずは、取り入れた空気を温める床下空間と暖房機器です。暖房機器が床下にあることで、フィルターの清掃などのメンテナンスもしやすくなります。隠れているため、インテリアの邪魔になりません。


床下で温めた新鮮な空気を送りこむための「床下ガラリ」です。


ガラリから送り込まれた新鮮な空気を循環させるために、間仕切り壁にはこのような空洞を設けます。部屋を密閉することはできませんが、天井に空洞があるので各部屋のプライバシーも確保できます。


ハウスダストなどで汚れた空気は、屋外の煙突(排気筒)から排出され、再び給気口から新鮮な空気を取り込みます。

パッシブ換気のご相談は竹内建設へ

竹内建設では、オプションでパッシブ換気「BAQOOL(バクール)」をご用意しています。BAQOOL(バクール)なら、基本的にエアコン1台だけで家中の換気を実現。機械をを使わない分、フィルターやダクトの汚れ・詰まりトラブルのメンテナンスに手間がかからず、室内の温度ムラも軽減できます。

▶「BAQOOL(バクール)」の詳細はこちらから

竹内建設なら、パッシブ換気の施工実績も多数ございます。パッシブ換気について興味をお持ちの方は、お気軽にご相談下さい。

▶無料相談のお申し込みはこちらから

まとめ

パッシブ換気は、機械を使わず自然の力だけで、計画的に効率よく家中を換気できる換気システムです。導入することで家の中での温度差が少なくなるほか、ランニングコストが抑えられたり、メンテナンスに手間がかからなかったりと、さまざまなメリットがあります。

一方で、パッシブ換気の施工は、専門的な知識と高い技術を持ち合わせた会社に限られるのが現状です。札幌でパッシブ換気のある住まいを建てるなら、実績豊富な竹内建設にご相談下さい。

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