断熱性能アップによる光熱費削減効果を解説!電気代を等級で比較

2025/01/08

竹内建設のスタッフ 吉田 音々
著者
吉田 音々

目次

「家の断熱性を高めると、一年中快適に過ごせるだけでなく光熱費の節約につながる」といわれますが、実際にどのくらい安くなるのか気になりますよね。
今回は、断熱性を高めたときの光熱費の削減効果や、高断熱にするメリットなどについて詳しく解説します。

家づくりで新たな住まいの光熱費が気になる方は、ぜひチェックしてみてくださいね。

断熱性能を高めると光熱費は安くなる

「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業調査発表会2023」によると、多くの事業者が断熱性能の高い住宅基準をクリアしたZEH(ゼッチ)の推奨ポイントとして、「光熱費の安さ」を挙げています。この調査結果からも、高い断熱性能によって光熱費が削減できるとわかります。

断熱性能の高い家は外気の影響を受けにくく、一年中快適に過ごせます。気温の変動が激しい夏や冬でも暖房や冷房の使用頻度が減るので、ガス代や電気代の節約につながるのです。

具体的な光熱費の削減効果について紹介する前に、まずは断熱性能を知るための指標や基準となる等級などを解説します。

※参照:(一社)環境共創イニシアチブ「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業調査発表会2023」

断熱性能の指標「UA値」とは

断熱性能とは、外気や日射熱の影響を受けずに、屋内で快適な温度を保つための能力です。
一般的な住宅の断熱性能を示す指標には「UA値」と「ηAC値」があり、これら数値が小さいほど断熱性能は高くなります。

・UA値:外皮平均熱貫流率
建物からの熱の逃げやすさを示す

・ηAC値:冷房期の平均日射熱取得率
建物への日射熱の入りやすさを示す

UA値を算出するには、屋根や天井、外壁、窓、床から逃げる熱を合計した数値を、外皮全体の面積で割って計算します。住宅の断熱性能がどのくらいかを知るには、UA値の数値をチェックしてみましょう。

※参照:国土交通省「断熱性能 ラベル項目の解説」

断熱性能の基準「断熱等級」とは

住宅の断熱性能を表す基準には、UA値とηAC値の数値によって定められる「断熱等性能等級(断熱等級)」があります。これは、国土交通省が定めた「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づいてランク分けされるもので、等級によって住宅の断熱性能がどの程度かがわかります。

日本列島は南北に長く、気温や気候の差が大きく異なります。それぞれの地域によって快適に過ごすための基準値は異なるため、日本全国を8つの地域に分類して基準が設定されています。

<地域別・戸建住宅の断熱等性能等級基準(UA値)>


等級は1から7まで設定されています。これまでは現行の省エネ基準である等級4が最高ランクとされていましたが、2022年により高いレベルの等級5・6・7が新設されました。

現在は新築時の義務化はありませんが、2025年4月以降はすべての新築住宅で省エネ基準達成の等級4が義務化されます。

引用:国土交通省「住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設」
参照:国土交通省「断熱性能 ラベル項目の解説」

「省エネ基準」とは

省エネ基準(省エネルギー基準)とは、「建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令」で規定された建築物エネルギー消費性能基準のこと。国が進める省エネルギー施策のひとつであり、省エネ性能を確保するために必要な住宅などの構造や設備に関する基準です。

2025年4月から新築住宅に義務化される省エネ基準は、断熱等級4に該当します。これから家を建てる場合は、断熱性能の等級4をクリアしているかどうかをチェックしましょう。

参照:国土交通省「省エネ基準適合が義務付けられます」

「ZEH基準」とは

省エネ基準と比較されることの多いZEH基準とは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略で、家が消費するエネルギーから太陽光発電などによってつくり出したエネルギーを差し引いてゼロになる住宅を目指す指標です。

ZEH基準は断熱性能だけでなく、省エネ性能の高い冷暖房の採用や、太陽光発電などの創エネ設備の導入なども必要です。

「HEAT20基準」とは

断熱性能を示す指標には、HEAT20基準も挙げられます。HEAT20では、戸建住宅の断熱性能の基準を、UA値によってG1~G3の3つのランクで評価しています。

最高クラスの断熱基準であるG3は省エネ基準よりもかなり厳しいため、条件をクリアした住宅は高い断熱性能や省エネ性能がある家といえます。

断熱性能を高めると光熱費は年間14,000円程度安くなる

断熱性能の重要さや基準について理解したところで、実際に断熱性を高めると年間でどのくらい光熱費が安くなるのか、具体的な金額を算出してみました。

1年間でどのくらいの電気代になるのかUA値ごとに比較し、35年住むとどの程度の節約になるのか、参考にしてみてください。

UA値ごとに光熱費を比較!

断熱性能の指標となるUA値ですが、省エネ基準、ZEH基準、HEAT20基準によって数値が異なります。それぞれの基準によりどのくらい光熱費が変わるのかを見ていきましょう。

シミュレーションする際は、地域区分は2(北海道の札幌エリア)、床面積は120㎡、冷暖房はエアコン、太陽光発電設備は設置しない設定としました。

実際に使用する暖房器具や電気機器などによっても電気代は変動しますので、金額はあくまでも目安とし、断熱性能の違いでどのくらい電気代に差が出るかに注目してみてください。

<UA値ごとの年間電気代の比較シミュレーション>



UA値 年間電気料金の目安 省エネ基準との差
省エネ基準
(等級4相当)
0.46 234,432円
ZEH基準
(等級5相当)
0.40 220,584円 13,848円
HEAT20 G1 0.34 210,336円 24,096円
HEAT20 G2
(等級6相当)
0.28 200,076円 34,356円
HEAT20 G3
(等級7相当)
0.20 186,756円 47,676円

※北海道電力、従量電灯B、30Aで使用した場合

電気代の差は、等級4と5では月あたり1,100円程度、年間では14,000円程度です。HEAT20基準の最高クラスであるG3と等級4を比較すると、月あたり4,000円ほど、年間で47,000円ほど節約できます。断熱性能による効果を感じられますね。

参考:エネルギー消費性能計算プログラム
参考:北海道電力「電気料金の計算」

35年間住むと約49万~164万円削減できる

計算結果により、断熱性能による電気代の節約は、年間で14,000~47,000円程度であるとわかりました。

断熱性能を高めるためにかかるコストからみると、思ったほど節約できる金額は大きくないと思うかもしれません。しかし、35年間住み続けた場合、節約できる電気代の合計は49万~164万円もの金額となります。

長期的に見ると大きな節約になると考えられます。

断熱性能を高めるメリットは光熱費の節約以外にも

家の断熱性能を高めると外気の影響を受けにくくなるため、暑さや寒さに悩まされず快適に過ごせるようになり、光熱費も節約できます。それ以外にも、住む人の健康維持や補助金・税金の優遇を受けられるなどのメリットもあるのです。

ここでは、高断熱住宅のメリットについて解説します。

ヒートショックのリスクが減る

断熱性能を高めて家の中の温度を一定に保ちやすくなると、住む人の健康被害のリスク軽減にもつながります。

家の中の温度差が大きいと、温度の急激な変化によって血圧が変動して心臓や血管に負担のかかるヒートショックなどの事故を引き起こす可能性もあります。ほかにも、室温が低い住まいで過ごすと血圧が上昇する傾向にあり、健康に影響が出ると考えられ、注意が必要です。

断熱性が高い家で、冬も夏も快適に過ごせるようになれば、ヒートショックや高血圧の防止、熱中症の予防などさまざまな健康へのリスク軽減が期待できます。

参照:国土交通省「『省エネ住宅』と「健康」の関係を ご存知ですか?」

補助金や税金の優遇を受けられる

住宅の省エネルギー化を推進するため、断熱性能の高い省エネ住宅では、以下のような税制の優遇措置や補助金を利用できる制度が用意されています。

・住宅ローン控除の優遇
住宅ローンを利用して住宅の新築や増改築をする際に、住宅ローン控除の限度額が優遇されます。

・住宅取得等資金の贈与の非課税特例
親や祖父母から資金援助を受ける際、一定額まで贈与税を課さない制度。省エネ等住宅の場合には、1,000万円まで住宅取得等資金の贈与が非課税となります。

・こどもエコすまい支援事業
子育て世帯や若い夫婦世帯が高い省エネ性能(ZEHレベル)の住宅を新築する際に、要件を満たせば1戸あたり100万円の補助が受けられます。

・戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH) 化等支援事業
ZEHの新築戸建住宅を建築・購入する人に対して、55~125万円の補助が受けられます。

断熱性を高めると光熱費が安くなる理由

断熱性能を高めるとさまざまなメリットが得られることがわかりますね。
ここでは、断熱性能を高めると光熱費が安くなる理由についても考えてみましょう。

外気温の影響を受けにくいから

家の断熱性能を高めるには、壁や床、天井などに断熱材を入れ、熱を逃がしにくい窓や扉などを設置し、設計段階から気密性の高い家づくりを行います。

外気温の影響を受けにくい構造によって、夏は家の中の温度が上がりにくく、冬は暖めた空気が外に逃げにくくなります。最終的にエアコンや暖房機器の使用頻度が減るため、光熱費の節約につながるのです。

冷暖房効率が上がるから

断熱性能の向上に欠かせない熱交換換気システムは、室内の空気を入れ替える換気の際に、取り込む外気の温度や湿度を調整する仕組みです。

この換気システムにより、外気温からの影響が軽減され室温を一定に保ちやすくなるので、冷暖房効率が上がり光熱費も節約できます。

光熱費は気温差の大きい夏と冬に大幅に上がる傾向にあり、節約のためには冷暖房効率を上げてなるべくエネルギーを消費しないことが求められます。断熱性を高めて光熱費を安くするには、冷暖房をどれだけ使わずに済むかが大きなポイントになるでしょう。

光熱費を最大限に抑える方法

断熱性能を高めるだけでなく、別の方法も取り入れると光熱費をさらに削減できます。これから家を建てる方も、今からでも住まいに導入できるものがないか検討してみてください。

太陽光パネルや蓄電池を導入する

ZEH基準では、断熱性能を高めるほかに太陽光発電などの創エネ設備導入も求められます。

太陽光発電パネルを設置すれば、電気を使うだけでなくつくり出せるので、家で消費する電気代の節約が可能です。ただ、太陽光発電だけでは電気をためておけずに、電気が余ってしまう場合もあります。

太陽光パネルを設置する際には蓄電池も同時に導入し、非常時や電気を大量に使う時期のためにためておくことをおすすめします。

省エネ性能の高い冷暖房や給湯機を導入する

さらに断熱性を高めるには、省エネ性能の高い冷暖房や給湯機の導入がおすすめです。

省エネ性能の高い冷暖房には、部屋に人がいるかどうかを検知して無駄なく運転したり、日差しや降雪など気象予報から室内の環境を予測して温度を制御したりと、さまざまな機能があります。

最新のエアコンは省エネ性能が進化しており、特別な機能がなくても節電効果が向上しています。10年以上前のエアコンを新しく買い換えるだけでも電気代の節約につながるでしょう。

また、排気熱を再利用したり大気中の熱を取り込んだりしてお湯を沸かす機器省エネ給湯器は、熱効率が高く少ない燃料で高効率な給湯が可能です。ガス代や電気代の節約になるでしょう。

パッシブ換気を導入する

パッシブ換気は、機械を使わずに自然な空気の流れで換気する方法です。

給気口から取り込んだ外気を床下で暖めてから、暖かい空気の浮力により家中を巡らせ、そのまま天井の煙突から排気されます。24時間自然に換気し続けられて、電気を使わないため電気代を削減できるだけでなく、冬場は家全体を効率的に暖めるので暖房効率も上がります。

ただ、暖かい空気の浮力が動力源となっており、温度差のない季節や夏は効果が限られる点には注意が必要です。

断熱性能を高めるときの注意点

居住地域や家の設計などによって、断熱性能の適切な高め方は異なります。等級や指標の数字だけにとらわれず、建築を依頼する業者の選別なども含めて慎重に検討してみてください。

ここでは、断熱性能の高い家を建てる際に、注意したい点について解説します。

居住地域に合った適切な等級を選ぶ

断熱性能は、高ければ高いほど良いわけではありません。

断熱の基準となるUA値は、地域によって大きな差があります。例えば、等級4の場合、北海道エリアの基準は0.46ですが、関東から南のエリアでは0.87と2倍近くの差があります。それぞれの居住地域に合った、適切な等級を選ぶことが大切です。

なお、2025年に義務化される等級4は高い断熱性の水準とはいえないため、これから新築する場合は2030年以降に義務付けが予定されている等級5以上を目安にするのが理想的です。

効率的に換気できる家づくりをする

高断熱の家は気密性が高く外気が入りにくいため、家全体をまんべんなく適切に換気しないと空気がよどんでカビやダニ、結露などが発生する恐れがあります。冷暖房効率を高め、快適な空間を維持するには、効率的な換気システムを取り入れた家づくりが重要です。

換気システムには、第1種、第2種、第3種の3種類があります。

・第1種換気:給排気を機械で行う。熱交換器を利用できて冷暖房効率は良い一方で、コストがかかる。
・第2種換気:吸気のみ機械で強制的に行う換気。食品を扱う工場などで採用される。
・第3種換気:排気のみ機械で強制的に行う換気。コストが低くメンテナンスしやすいが、外気が入り込みやすい。

住宅の断熱を高めるには、熱交換器を利用できる第1種換気がおすすめです。換気システムで迷うときは、施工実績が豊富で信頼できるハウスメーカーや工務店に相談してみましょう。

断熱や光熱費に関するご相談は竹内建設へ

札幌市にある竹内建設の新築住宅は、長期優良住宅の基準を全棟でクリアしており、高い耐震性や耐久性、断熱性を保持した高性能の家づくりを行っています。
断熱性にもこだわり、UA値0.28以下を標準仕様としているほか、第1種換気熱交換換気システムを導入しているので安心です。

住まいで気になることがある方や、寒さの厳しい北海道で断熱性能の高い家を建てたいとお考えの方は、ぜひ一度竹内建設にご相談ください。モデルハウスや見学会のイベントも随時開催しています。

▶お問い合わせはこちらから

まとめ

家の断熱性を高めると、光熱費に差が出ることがわかりました。1年間では少ない差であっても、長期的に見ると49万~164万円ほどの節約になります。換気システムやエアコン、給湯器なども省エネ性能の高いものを選んだり、太陽光発電パネルなどの設備を取り入れたりすれば、さらに大きな節約も可能です。

断熱性の高い家は光熱費削減だけでなく、住む人の健康や快適な暮らしにも影響しますので、これから家を建てる方はぜひ断熱性能にも着目した家づくりを検討してみてください。

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